2012年09月24日

赤土監視員からの視点

21日(金)にアイランドホテルで開催された「水土里の路ウォーキングIN久米島」の

シンポジウムでは、「クメジマボタルにつながる農村環境の研修」という

サブタイトルの内容で、久米島ホタル館の館長による基調講演と、

南部農林土木事務所の河辺班長が司会を務める

パネルディスカッションが行なわれました。

赤土監視員からの視点

その際の話題提供として、H14年から8年間沖縄県から委託され

久米島で続けてきた、赤土監視員の業務と、その視点を、

ほんの少しですが、参加者の皆さんに聞いていただくことができました。

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赤土監視員の業務は、

①赤土の流出状況の把握及び流出源の調査等に関する業務

 降雨時又は、降雨後において、河川・海域への赤土等の流出状況を把握し、
 流出源の調査を行い、その内容について報告すること

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②赤土流出防止に関する業務
 現に土地の区画形質の変更を行っている事業現場について、赤土流出等防止施設の
 設置状況について監視し、その内容について報告すること

③その他、赤土流出防止活動の支援に関する業務
 県及び市町村との合同監視パトロールへの参加、条例の周知活動への参加、
その他環境保全課長が必要と認め特に指示した事項及びその内容について報告すること

となっていました。

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そして、監視活動報告書を提出すれば、もちろん報酬を受けることができましたが、

その年間総額は、生計を賄えるものではなく、監視パトロールに赴くガソリン代や

写真の現像代、報告書のコピー、郵送代を差し引くと、本当に僅かなものでした。

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しかし、わたし以前の県から委託された、久米島でのその他の監視員は、

月額かなりの高額支給を受けていたため、県からの委託業務というだけで、

赤土監視員の私は、随分長い間、もしかしたら今でもガ-ン

『金目当てのチクリ屋』という非常に不名誉なレッテルを貼り付けられていました。

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もちろん、そうした悪意のあるうわさ話が広まるのは、公共事業費に組み込まれた

赤土流出防止対策費を、適切に使用することを惜しむ業者や、

赤土流出防止対策の目的を理解出来ずに、作業の煩わしさに対する不満を募らせる

作業員がいた事、そして、行政側も久米島が離島であるという”お目こぼし”から

赤土流出防止対策の本来の目的である、公共の資金を投じて行われる開発事業では、

総ての国民の財産である自然環境を損なわないように最善を尽くす義務と

責任があるという事を、その事業に関わる業者に対して、

真剣に理解を求める事が足りなかったのだと想います。

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それでも、監視報告書を積み上げていくことで、状況は動き出してくれました。

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赤土防止対策の現場視察に、行使力のある沖縄県の保健所から、

頼もしい指導員が、年に何度も久米島に来てくれるようになったのです。

もちろんその動きは、安穏としていた久米島の事業現場に混乱と緊張をもたらしました。

これまで、適当で済んでいた赤土流出防止対策の費用と労力、そして能力が、

事業を施工する当然の責務として、厳しく求められるようになったからです。

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そして、閉ざされた島社会の中では、当然なことながら、

島の建設業者やその家族、様々な関係者からは、恨みを持たれることになりました。

それでも、厳しい監査に応える現場の作業能力は、卓越され、

赤土流出防止対策の工法にも、年々技術の向上が図られることで、

久米島の自然環境に大きな負荷をかけ続けていた赤土の流出量は、確実に減り始めました。

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あれから10年時が経った今、対策が遅れている農地の現状と比較して、

今では、公共工事の事業現場で、赤土流出防止対策に、

「やっても、意味がない」と、平気で言い放つことを、容認する雰囲気はありません。

そして、間違いなく、赤土対策の防止に努める作業者の技術は向上し、

その作業者のいる事業者には、仕事が回ってきます。

振り返って想うのは、確かに多くの人の気持ちに波風は立ててきたけれど、

久米島の赤土流出問題を考える際の歯止めの役割は、果たせたのではないかと想います。

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楽をすることが、賢いという想いに囚われる事無く、

難儀をして身に付けた技が、”いざ”という時、自分を助けてくれます。

島建ての出来る人材を育むためには、楽や得をあてがうのではなく、

自らの行なうべきことの意味と目的を、真剣に理解させる努力が必要です。

工事現場とは違って、対策費用の無い農地での赤土流出の防止対策は、もっと深刻です。

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しかし、その状況を作り出してしまう耕作者の一人一人に対して、

赤土が流出して自然環境に与える様々な影響への責任を自覚してもらう事は、

実際の現象の深刻さからは、とても切実で大切な事なのです。

農地の規模や面積、場所によって、赤土が流れ出す状況とダメージは違います。

私が、問題にしてきたのは、広大な面積・勾配が激しい傾斜地・河川や海岸の近く

で、開墾を行う農地でしたが、対策の術を持たない農家からは、

工事現場以上に嫌われてしまいました。

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それでも、少しずつではありますが、赤土流出の対策を行うことが、

久米島の人々の願いとして、当たり前に口に出して言える雰囲気になってきました。

この島の自然環境が、いつまで耐えられるのかは解りませんが、

その終わりは確実に加速しています。

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  鍾乳洞が赤土で埋まっている

赤土流出を減らすための対策を、一日でも早く、一人でも多く、

現実的な行動にする事ができたなら、久米島ホタル館の浦地川の様に

クメジマボタルを再生させる事が出来ます。

それは、この島で生まれ育つ子どもたちの為の未来を支える大人たちにしか

出来ない事なのです。

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その努力ができる島の未来は、きっと希望に満ちた明るい未来になります!

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