2008年06月13日

アマミヘビトンボ

「これって何がいるんですか?」

ホタル館の一角にある土の詰まった容器を見つめて、こども達が質問してきました。

「それはねぇ、クメジマボタルと同じように幼虫時代を川の中の水中で過ごして、

蛹になるために、土の中にもぐって、それから成虫になって陸上に出現する、

『ヘビトンボ』という虫がいるんだよ。」

その名前を聞いて、子どもたちは、「それって、ヘビの仲間?」

「ちがうよ、トンボだよねぇ!」と、大きな声で、自信たっぷり。

それから数日後に、出てきた成虫のヘビトンボを見て、こども達は「???。」

「へ~んなの~。」頭は、ちっちゃくて、翅は、トンボみたいに広がってないのに、

おまけに、どう見ても、これは、虫の仲間、ヘビの仲間には見えません。

アマミヘビトンボ

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アマミヘビトンボ

「でもさぁ~、きっと、この首が長く見えるところが、ヘビみたいに見えるんじゃない。」

「名前って、本当じゃなくってもそう見えるからって、付ける事もあるのぉ~。」

「それって、いいのぉ~?」「わっかんなぁ~い。」

子どもたちの楽しく弾む会話の主は、そんなやり取りには、お構いなしに

羽化したばかりの柔らかな翅を、震わせるようにしながら

容器の中の地面に見立てた土の上を、這い回っています。

アマミヘビトンボ

4月下旬のこの日に、お目見えしたのは、アマミヘビトンボ。

アマミヘビトンボ

透明な羽を持ち、ひらひらと不安定にゆっくりと飛び立つ姿は、

とても、トンボのスマートで素早い、かつ安定した正確な動きとは比べようがありません。

アマミヘビトンボ

ヘビトンボは、羽を含め身体全体が幅広くやわらかいため、

飛ぶ時のバランスが悪く、ひらひらしたという表現がぴったりの飛び方をします。

それでも、野外に放すと、意外にも空中を高く、遠くまで飛び去っていきます。

見た目の軟弱さとは違って、直ぐに噛みつく習性や、匂いも強いことから、

以外にも、毒虫や危険虫として身を守り、結構がんばって生きているのかもしれません。

私は、なんとなく、アニメ「ナウシカ」で、ひらひら飛んでいく大きな虫の場面を見る時に、

このヘビトンボを想像してしまうので、

アマミヘビトンボ

反対にヘビトンボを説明する時には、実際はずいぶん違うのですが・・・、

アニメに描かれた虫の姿を、ついつい、ヘビトンボにたとえてしまいます。

こんな変な姿ですが、産卵管や翅の基部の形態、遺伝情報などから、

幼虫が、あり地獄として有名なウスバカゲロウなどと共に、

甲虫の祖先の姿に最も近い仲間の昆虫だといわれています。

アマミヘビトンボ

私が、この随分変わっている、ヘビトンボという昆虫を知ったのは、残念ながら、

野外ではなく、又、ホタル館のような学習施設でもありませんでした。

それは、あるテレビ番組、それも、教育番組でもなく、なんと、

当時の人気娯楽番組「仮面ライダーアマゾン」に、出てきた獣人としてなのです。

その獣人ヘビトンボは、最初は、幼虫の姿をした怪人で、

つぎに、サナギ、そして成虫になるまでの3つのステージごとに変身してゆきます。

アマミヘビトンボ

この獣人ヘビトンボが、サナギの時にも仮面ライダーを襲うので、

“サナギって、動かないはずなのに変だなぁ。”と、

子どもの頃の記憶に印象深く刻まれたのです。

この疑問、本当は、凄く専門的で、良く描かれていたことを知ったのが、

「この昆虫は、サナギのときにも牙を動かして、敵を撃退することができるんだ。」と、

その幼虫を、捕獲してきた時に、アマミヘビトンボの特徴の一つとして教えてくれた

館長の一言に、「へぇ~、仮面ライダーって、結構、しっかりしてたんだなぁ。」

と、何十年も眠っていた記憶の疑問に明りが点った感じでした!

館長の話によれば、この蛹が噛みつくことを身をもって発見したのは、

やはり、昆虫の研究者なのだそうです。

アマミヘビトンボ

そして、その噛み付く虫を、昔の人が、生薬として食べていたことにも驚かされます。

ヘビトンボの幼虫は、孫太郎虫と呼ばれ、竹で串刺しにされ、干されたものが

虚弱体質の子供の「疳の虫」に効用があるとして、最近まで利用されていました。

由来は、福島県の斎川のヘビトンボの幼虫に関するものが有名で、

平安時代の永保年間(1081年から83年)に虚弱体質の7歳の子供(名は孫太郎)が

重病を患った時、ヘビトンボの幼虫を食べるようにとの神社のお告げあり、

その結果、元気を取り戻し、成人して見事に親の敵討ちが出来たという言い伝えや、

孫左衛門という名の老農夫が、ヘビトンボの幼虫の串焼きを食べると元気になり、

70歳の妻にも勧めると、子供まで授かった(その子の名前は孫太郎)という言い伝えから

斎川のヘビトンボの幼虫は孫太郎虫と呼ばれ、江戸時代からつい最近まで、

子どもの「疳の虫」や「強壮剤」として効用があるとして、利用されたといいます。

その価格は、「塩半俵」という言葉が残っているくらい、高価だったともいわれています。

おまけに斎川の田村神社には、孫太郎虫の供養碑まであるというのですから、

その効き目、ご利益は、本当にありがたかったのでしょう。

アマミヘビトンボ

ヘビトンボの幼虫は、クメジマボタルと同じように、川に棲む水生昆虫の一種。

水生のホタルの幼虫と同じように、独自に水中でも呼吸が可能な鰓のような

呼吸器官を発達(進化)させました。腹部の第1節から8節までの両側に、

それぞれ1対の糸のような、節のある気管鰓があります。

渓流の瀬の転石下に隠れ住み、うろつきながら、そこに棲む他の水生昆虫を

捕食する、肉食の水生昆虫ですから、アマミヘビトンボは、クメジマボタルの幼虫も

見つければ食べてしまうでしょう。

久米島ホタル館では、アマミヘビトンボの幼虫を飼育していて、4月から5月頃に、

出現した成虫を見ることができます(クメジマボタルの出現期とも重なります)。

アマミヘビトンボ

アマミヘビトンボは、久米島と奄美大島、徳之島だけに分布しており、

久米島では、生息数が非常に少ない、ホタルにつながる大切な生きものだといえます。

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