2006年12月20日

冬の久米島・山景色

激しく降り続いていた雨が、プラチナ色のしずくを

細い桜の枝に残して、遥かな海へと降りてゆきました。

冬の久米島・山景色

あとには、にじんだ灰色の雲と、足早にやってくる闇の気配だけが

ひっそりとした山の散策路に残されています。

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夏の陽にまぶしく輝く光を受けて鮮やかに映えていた緑の木々のほとんどは、

落葉することもなく目の前に広がっていますが、

乏しくなった光線の下では、一段と深みがかった緑色に

ツワブキの黄色い花の色が、華やかさを添えてくれます。

冬の久米島・山景色

ツワブキは、艶のある蕗と書くつやぶきがなまったといわれているそうです、

丸みを帯びた葉の形からは想像できないキク科と言う分類も、その花を見ると頷けます。

山道は、ススキやチガヤが、きれいに刈り込まれて、冬を告げるツワブキだけが

すっと大きく伸びています。

この島では、自然公園管理地やダム湖周辺の山道を、各整備事業の予算で、

年に数回の下草刈りが行なわれています。

昔ながらの農法と暮らし方で、整えられていた下草刈りも、

今では、高齢化と山の利用(薪拾いや畑の肥料、家畜の餌やシイの実やキノコ拾いなど)が

無くなり、放置された荒地が、島のあちらこちらに広がっていくばかりです。

この時期だと、草の伸びが緩慢になるため、ほとんど行なわれることはありませんが、

猛暑の時期には、2月に一回でも、追いつかないほど繁茂します。

冬に満開のツワブキを楽しめるのは、下草刈りの作業員の細やかな選別刈りのおかげと

ノボタンの薄紅色やサイヨウシャジンの淡紫色を目にする季節にも、感謝の気持ちが溢れます。

冬の久米島・山景色

私は、2年ほど前に彼らと一緒に半年ほど作業をしたことがあります。

草刈り機を担ぐことはできませんが、刈られた草をレーキで集めたり、

草で覆われていた時には、見えなかったポイ捨てのごみや

時には、不法投棄の大量のゴミを拾い集める事が仕事でした。

久米島には、猛毒のハブがいますから、藪の中に捨てられたゴミを拾うのには、

臭くて、きつくて、汚い上に怖いという4Kでしたが、

私達は、通り過ぎた後の道の清清しさを、なんだかんだ言いながらもすごく誇りにしていて

そのやりがいのある意欲的な姿勢が、とても楽しい仕事にしてくれていました。

一度、熟練した作業員が

「毎日草を刈っていると、何度も何度も伸びてくる草花もあれば、

何回か刈ると無くなってしまう草花があるわけさぁ。

だから、どんなに草ぼうぼうでも、この草花だけは絶対に刈らないようにしているんだよ。」と、

仕事の合間に教えてくれたのは、可憐なサイヨウシャジンの花でした。

この方は普段はとても無口な人なのですが、そのやさしさに触れたとき

本当にわずかかもしれないけれど、こうして守られていた山の植物達もあったのだと知りました。

好ましい植物を自然界から運びとって庭に植えたり、島外へ持ち出すことで

自然絶滅した植物が、この島でも多くあることを知っていましたから、

そんな欲も無く、素朴に野に咲く花を愛でることのできるこの方の崇高さに胸が熱くなりました。

空を仰ぐと、おもく垂れ込めた空の灰色に、清楚な白い山茶花の花が美しく咲いています。

冬の久米島・山景色
   オキナワサザンカ

このサザンカも、冬に咲く花としては、とても有名な花で、童謡の「焚き火」の歌詞

「サザンカ、サザンカ、咲いた道・・・・。」でも唄われています。

開いた実の形が、椿にそっくりなのは、どちらもツバキ科の仲間で、お茶の茶葉も同じです。

園芸品種の華やかさはありませんが、山の中で咲く植物の息づくような美しさには、

取り巻く生きもの達の生命のつながりの輝きが、加味されているからなのでしょうか

遠くからなだらかな山陰をながめる度に、生きもの達のやわらかな命を感じます。

冬の久米島・山景色

季節を通して、味わいのある山の自然を、

営みや生業の中で守り育てていくことが、喜びとなる生き方を

この先の島のプランニングの中に盛り込まれていくことを願いつつ

降りる山道のひとあし、ひとあしに、

あの頃の、さわやかな草刈り作業の仲間達の笑顔を偲びながら

家路へと向かいました。

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