2012年10月19日

仲里中学校1年生の課外授業その2

生徒達を、最初に案内したのは、建設会社の前の立派なフクギ並木。

そして、そのフクギが落とした葉っぱが、いっぱい詰まった袋です。

「このフクギの葉っぱは、毎日落ちるため、

屋敷林として育てている人は、庭掃除が必要になります。

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でも、台風などの災害が通り過ぎた後に、ほとんどの木々が、

塩害や風害で、折れたり、萎れたりしている中、フクギの木だけは、

青々として立派な姿をしています。もちろん、フクギに囲まれた家屋敷に、

大きな被害は見られません。正に、福を招く木、福木なのです。

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久米島は周囲を海に囲まれた小さな島であり、南西諸島特有の台風に毎年曝されています。

海洋から噴きつける波風の塩害や風害・暴風から、集落や屋敷、農作物を守るため、

島に暮らす人々が昔から継承してきたのは、島に自生する植物や、

他所から導入する植物の特性を理解し、有効活用することでした。

今回の仲里中学1年生の課外授業では、台風17号のもたらした大きな被害の痕を

集落、海岸、森へと移動し、実際に見てもらいながら解説をしていきました。

仲里中学校1年生の課外授業その2

それは、生徒たちに、台風の被害で傷ついた島の痛みを、素直に感じる事と、

その衝撃から、目を逸らしたり、誰かに任せたりするのではなく、

自分自身で、こうした問題を解決するためには、どうすればいいのかを考える事が、

課外授業の目的であり、学びの原点だと想っているからです。

仲里地域の集落に残るフクギ林は、15世紀の琉球王朝時代の祖先が、

同じように台風被害のあるフィリピンなどの東南アジアあるいは中国から、

大交易時代に暴風から島を守るために必要として持ち込み、

大切に引き継いできた外来の有用植物でした。

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それが、セメントなどの手軽で管理のいらない塀が、普及する高度成長期になると、

落ち葉を掃きとったり、延びすぎた枝の管理が必要な植物は、無用となり、

管理をする時間を他のやりたい事で埋め尽くしている世代と、

管理をしたくても高齢で作業がきつくなった世代の間で、

こうしたフクギ林は、今では迷惑な存在という扱いを受けるようになりました。

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「これから先の時代、セメントの原料は無くなります。石油だって、石炭だって、

無限にあるかと思われていた資源には、限りがあるということを、今では誰でも認識しています

でも、このフクギの根元を見てください、新しい芽が出ていますよねふたば

そう、生きているからです。」

と、話す館長の言葉の先を、生徒たち一人一人が、導き出してほしいと想いました。

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次に、イーフビーチの海岸に広がっていたグンバイヒルガオの無残な姿と、鉄錆色に変色した

モクマオウの姿、アダンやユウナの海岸植物が、隙間だらけになっている事が、

実は、美しかったイーフビーチ海岸の大切な砂を失わせている原因であることを話しました。

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波打ちぎわには、植物が生えることはできないけど、陸側には、こうしてグンバイヒルガオが、

砂浜に広がるように生えています。

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そして、その近くには、ハマゴウ、ハマボッス、シマアザミ、ハマオモトなどの海浜植物、

アダン、クサトベラ、モンパノキ、オオハマボウ(ユウナ)、ハスノハギリなどの低木から

亜高木、高木と、なだらかな緑の勾配を、壁のように海にせり出しながら、今は私たちが

住む居住地、畑や集落のある浜の後背地を守るように、海岸植物が密植して生えていました。

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こうした海岸植物たちは、多くの植物が好む後背地の静かな環境では、

生存競争に負けてしまう事から、ライバルの少ない厳しい環境、乾燥し、

塩や風の影響を強く受ける過酷な海浜環境で生き延びる方法を身に付けました。

自らが生き残るために強い風に飛ばされないように、砂地を張って広がるグンバイヒルガオは、

人間にとっては、海岸の砂を定着させるのに好都合な植物となりました。

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そして、塩害に強いアダンは、密植して低く生えることで、風に巻き上げられた砂を、

海岸に押しとどめてくれます。こうした海浜環境特有の植物たちは、台風などで、

海から巻き上がった塩分を含んだ風だけではなく、海砂が広がることも防いでいるのです。

島を守る大切なヒンプン植物を、はぎ取ってしまっては取り返しの付かない事態となります。

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現在、問題となっているのは、アダンの中にゴミが入って掃除が出来ない事や、

後背地の海岸林の中にハブがいるから危険だということで、

海岸と集落の間に密集していた後背地の海岸林は、多くが伐採され寸断されています。

そのため、そこから吹き込んだ風や潮の影響は、年々、集落を痛めていくことでしょう。

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海に面した集落では、その昔、海浜やその後背地である防風林の役割をよく理解していました。

海まで行き着くために、海岸林、防風林の中をL字やS字に蛇行しながら抜け出ることを、

集落を守るために必要だと十分納得していて、その在り方に馴染んでいたのです。

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宮古や八重山、本部でも、暗い樹木の中をくぐるように抜けて

面前に現れる明るい白い砂浜と青い海のコントラストの違いを、

沖縄ならではの風景として、大切に残しています。

今の欲求を満たすことだけを優先するあまりに、

沖縄の先祖が、自然を味方にしてきた様々な知恵を検証し、学び、

今に生かすことを怠る事は、この先の長い年月の間に起きる自然災害に

人的災害を上乗せしてしまう危険があります。

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私たちは、自然を味方にしながら島を守ってきた祖先への感謝と、

その引き継ぐべき知恵を再認識する専門的な知識を得ることで、

未来へ向けた賢い選択を、この島で暮らす多くの人が行ってくれるように願い

共に活動しています。

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その3では、だるま山の根こそぎ倒れたサクラの木と、周りを囲むマツの木について、

生徒たちの疑問に答えながら案内していきます。

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