2007年02月02日

ナイルパーチとティラピア

ホタル館のアクアリウムで紹介している、カワスズメ(モザンピークティラピア)と

ナイルティラピア(イズミダイ)の2種類の外来魚は、過去に養殖目的として持ち込まれ、

その後、無責任にもダムや河川にも放たれことで、また、海水にも耐えられたため、

汽水域から海域を介して分散し、久米島のどの河川にも入り込んで繁殖しています。

ナイルパーチとティラピア
   ナイルティラピア(イズミダイ)

ドキュメンタリー映画でセンセーションを起こしている「ダーウィンの悪夢」。

予告や解説を読む限りでは、解き放たれたナイルパーチによって、

タンザニアのヴィクトリア湖に生息する主にカワスズメ科(シクリッド)の魚類をはじめ、

非常に豊かな魚類相を維持してきた多様な生態系が破壊され、大量絶滅をともなった

大異変がこのアフリカ最大の淡水湖をおそっていると説明されています。


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オランダの進化生態学者ティス・ゴルトシュミットは、

1万2500年前には干上がっていたといわれるヴィクトリア湖がその後湛水し、

たった1つの種類から計算上およそ25年に1種の割合で枝分かれし、

500種類を超えるカワスズメの固有種(未記載種を多く含む)が生まれてきたことを

DNAの解析によって突き止めました。

映画の題名に使われている「ダーウィンの悪夢」とは、

この「ダーウィンの箱庭」と呼ばれていた多様で豊かな湖に生息する

200種類を超えるカワスズメが、水産業の切り札として持ち込まれたナイルパーチによって、

姿を消し(そのほとんどが絶滅したと推定され)、

その過程で起きた事件を悪夢として表現したものだと思います。

ナイルパーチの激増が、資本主義の縮図として、市場価値の高い巨大水産業を築き上げ

その富を求め、人が集まり都市化が進み・・・さらに市場の拡大が進んでゆく。

当然の事ながら、法整備がゆっくりとしか進まないために、様々な社会問題が引き起こされます。

ナイルパーチとティラピア
   久米島でもナイルパーチの切り身をスーパーで時々見かけるようになりました。

もちろん、湖水域周辺の多くの人たちも、生活の糧としてナイルパーチを手に入れます。

そのため、切り身にして油で揚げる手軽な料理法が、

脂肪分の多い魚体を最もおいしく食べる方法として広がり続け、その燃料資源として

周辺の森林が大量に伐採され消費されてゆきました。下水や生活排水に加え、

大量の土壌も流入し、湖の富栄養化はさらに悪化しました。

そのため、爆発的に植物プランクトンが発生し、それらを主食とするカワスズメ類が、

すでにナイルパーチによって絶滅状態であったことも、

増えたプランクトンの死骸を湖に大量に堆積させる結果となりました。

こうして、湖の生態系崩壊のスパイラルが、ナイルパーチ資源が価値を失うその時まで、

下手をすると生態系が崩壊する終焉まで、果てしなく猛烈な勢いで進み続けるのでしょう。

長い目で見て、このナイルパーチラッシュは、

本当に地域の近代化、活性化の救世主となるとはとても思えません。

後戻りができない以上、また放置することもできないため、

資本の論理(強力な捕獲圧)によって、大量の消費をし向けることで、

ナイルパーチを早く取り尽くさせ、次に、撲滅作戦として国際的な基金や資金を投入し、

固有のカワスズメがより多く生き残らせることができるように期待をかけたいのです。

ナイルパーチとティラピアナイルパーチとティラピア
 カワスズメ(モザンピークティラピア)の雄、奥が雌       カワスズメ(モザンピークティラピア)の雄(婚姻色)

沖縄本島から離島周辺の河川に、放置されたカワスズメ科の外来魚、

カワスズメ(モザンピークティラピア)やナイルテラピアは、食用として移入されたにもかかわらず、

生活排水と赤土(肥料や農薬を含む)で汚れた河川でも

爆発的に増えてゆく姿を目の当たりにして、

食としてのイメージが悪くなり放置され続けてきました。

環境汚染そのままに増加した外来魚を深刻な環境問題の一つとして、

この映画からのメッセージを素直に受け取ることができたとしたら、

それは、ある意味不幸中の幸いといえるのかもしれません。

ナイルパーチとティラピア
   特定外来生物のブルーギル

日本では、レジャーフィッシングで注目された

ブラックバス(オオクチバス)やブルーギルなどの外来魚が

固有種の多く生息する日本最大の琵琶湖に放たれ爆発的に繁殖したために、

経済効果の高い循環型伝統的水産業が、崩壊の危機に直面してしまいました。

沖縄でも、その危機は生態系の破壊という深刻な形で現在も進行中です。

本来は何よりも優先されるべき経済基盤としての自然や資源の保全が、

移植や移入という安易な手段で、

自然生態系そのものを永遠に葬り去る結果になってしまうとしたら、

この先、未来の子どもたちのための最低限必要な自然環境さえ残せなくなってしまいます。

ビクトリア湖を舞台にした「ダーウィンの悪夢」を教訓の一例として、

豊かで多様な自然生態系の保護・保全を地球規模で進めてゆくことは、

これからの国際間の最大の関心事となる時代が来ることを心から願っています。

☆ダーウィンの悪夢公式サイトhttp://www.darwin-movie.jp/

引用書籍 : 『移入・外来・侵入種 生物多様性を脅かすもの』 
              川道美枝子・岩槻邦男・堂本暁子/編 築地書房
『外来種ハンドブック』 日本生態学会/編 村上興生・鷲谷いずみ/監修 地人書館 など


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この記事へのトラックバック

悪名高いブルーギルですが
釣ってみると意外とおもしろいです。
ちびバスなんかより良く引くしパワーもあります。
池原ダムで釣ったやつは25cm越えてて
バスの40UP並みに...
ブルーギルの産卵コロニー【連夜の「おもしろBASS&釣り動画」】at 2007年02月22日 15:55
この記事へのコメント
今日は! 霧島住宅・宮原謙治です。良い住宅=良い環境という視点から、住宅環境科学研究を通して、幸せをもたらす家づくりを推進しています。相互リンクをお願いできませんか・どうぞよろしくお願いします。
Posted by 宮原謙治 at 2007年02月04日 19:09
謙さん、コメントありがとうございます。

さっそく、幸せをもたらす家づくりを、訪問させていただきました。
なかでも、「つぶれない会社はここが違う!」の姿勢や、
夕張市への温かなエールに共感いたしました。

相互リンクのお申し出は、こちらこそどうぞよろしくお願いいたします。
Posted by satou-n at 2007年02月04日 22:45
今日は!謙さんです。早速ありがとうございました。

良い内容のブログですね。顔を知らない人とをブログがつないでくれて嬉しいです。今から40年ほど前に、文通をしていたことを思い出します。これからもどうぞよろしくお願いします。
Posted by 幸せこだわり住宅職人 謙さん at 2007年02月10日 20:39
謙さん、コメントありがとうございます。

ブログ内容をお褒めに預かり光栄です!
これからも、共通に感じることなどありましたなら、ぜひご連絡ください。
こちらからも、ご訪問させていただきます。
Posted by satou-n at 2007年02月13日 22:23
今日は!謙さんです。コメントありがとうございました。

 謙さんのブログ(2/14)に 「高度科学の発達は、便利さや効率化を成しえましたが失った物も多くあります。」 という反省を、・・・・。

 satou-n:

私達の時代は、流されるのではなく立ち止まり、再構築しながら、過去と現在を繋ぐパイプ役として、次世代へ未来へのバトンをしっかりと、渡していけたらと考えています。

「住まい」は、私達にとって本当に大切なものです。
本当に良いものが、多くの人に供給される社会作りを
目指してゆきたいと思います。
これからも、良い記事を楽しみにしています。


いや、この通りですね。

批判や反省は出来てもそれをどのようにいかせるかがポイントとです。時代は何かが変わろうとして動き出しています。
地球や人が悲鳴を上げています。その悲鳴をちゃんととらえて対応することが求められていますが、負の財産が大きすぎて時間がかかるかも知れませんが、志を持って行く覚悟です。

これからもどうぞよろしくお願いします。
Posted by 幸せこだわり住宅職人 謙さん at 2007年02月16日 12:06
謙さん,コメントをありがとうございます。

私も、転んでは起き上がりの毎日ですが、
生きてることは、やっぱり楽しいです。

悲しみも苦しみも、耐えるたびごとに、少しだけ自分の成長を振り返れる
ような気がしますが、そんな自分を支えてくれるのは、
謙さんもブログでお話なさっているように、いつでもどこでもそばにいて励ましてくれる、私の愛する家族のおかげと、感謝しているのです。
Posted by satou-n at 2007年02月18日 18:48
今までティラピアの事や、経緯を知らず、ここに来ました。
彼女の郷土料理の材料として食卓に上がって、初めてティラピアという魚を見ましたが、魚体をみた第一印象で感じたのは、ブラックバスやブルーギルと同じ問題点を持っていそうに見えた事です。
まさか予感が当たるとは思わなかったです。
彼女の好物らしくて沢山手に入れたので、これからは経緯を感じながら食べていきます。
Posted by 奥さまはアフリカ人 at 2007年04月02日 16:40
奥さまはアフリカ人さん、コメントをありがとうございます。

驚きながらも奥様に対する深い理解と、
カルチャーの違いを包み込む愛を感じるコメントで、嬉しくなりました。

養殖やペットなどで、私達の身の回りには、様々な経緯から同じ時を
過ごすことになる生きもの達で溢れるようになりました。
切欠は、とても些細なことからはじまりますが、それに気付きはじめることで
ご自分の生き方に、深みが増し、しっかりとしてゆくものですよね。
このブログが、少しでも、お役に立てたなら幸いです。

余談なのですが、今年、ホタルの会では、ダム湖や川で繁殖した
ブルーギルやティラピアを取り除くために、釣り大会を計画しています。
できれば、その釣った魚は、有効利用で、食べることが一番良いと考えていますが、その料理法があまり良く解りません。

コメントを頂いて、お願いをするのは気がひけるのですが、
奥さまはアフリカ人の奥様にその美味しい料理法を教えていただけると
大変助かります。どうか、レシピを教えていただけないでしょうか、
よろしくお願いします。
Posted by satou-n at 2007年04月03日 08:13
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