2008年02月14日
お菊虫
年中花を咲かせているセンダングサやランタナのおかげで、
どんなに寒い冬の時期にも、
ホタル館の草原には、蜜源を奪い合うこともなく、蝶が戯れています。

穏やかな花の下で、ハート型に結ばれているのは、ジャコウアゲハの雄と雌。

冒頭で見ていただいた写真の正体は、
実は、このジャコウアゲハのサナギのときの姿なのです。
「つかまえた~。」
ホタレンジャーの女の子は、得意そうに、その黒い蝶を手づかみで次々に、捕まえています。
「それ、毒蝶だからねー!」と笑って、声をかけると、
「ひえぇー!!」と、大慌てで、捕まえて重ねて持っていた3頭の蝶を、振り払っていました。
「食べなければ、問題ないからね~!」
ホタル館に調べ学習に来た清水小学校の男の子達の方は、
女の子達とは、正反対に“毒蝶”と聞いて、思わず記念写真を撮っていました。

ジャコウアゲハは、本州、四国、九州、沖縄から、朝鮮半島、台湾、中国中南部に分布し
沖縄のものは、奄美沖縄亜種、宮古亜種、八重山亜種に分けられています。
そして、ウマノスズクサという蔓性の多年草の植物だけを、幼虫時代に食べて成長します。
日本には、琉球産の2種類を含め6種類もあるウマノスズクサ属は、
その属の学名をアリストロキアといいます。アリストロキア酸は
ウマノスズクサの有毒成分で腎障害(アリストロキア腎症)を引き起こします。

リュウキュウウマノスズクサの花
この毒は、卵から幼虫、サナギ、そして成虫になっても引き継がれ、
体内に生涯蓄積されているため、どのステージの時も
『美味しくないから食べないで!』とでも言うように、とても目立ちます。
目立つだけでなく、その上、簡単につかまえることが出来るのです。
成虫のジャコウアゲハの黒い羽にオレンジ色の目立つ斑紋は、蝶の仲間達からは、
生き残り率の高い毒蝶として知られているようで、最もよく擬態のモデルとして用いられています。

オキナワカラスアゲハ
しかし、そのジャコウアゲハのサナギの姿だけは、さすがにどの蝶も、
真似る事など、絶対に出来ないのではないだろうかと思うほど、見事なシルエット。
人間にとっては、『お菊虫』という幽霊の名前が付けられるほど
不気味な色と形、一度目にすれば、誰もが、絶対に忘れることはできないほど強烈な印象です。

今のこども達なら、たぶんポケモンキャラ、ちょっと前ならピグモン&ガラモンの発想かな?
このような生きものの姿や習性などに、人間の発想を重ね合わせて、
おとぎ話や言い伝えが、作られてゆく過程には、戒めや実際の出来事などが、
信憑性を裏付けるように偶然起きることもあって、“ロマン”という受け取り方なら
害も無く、楽しめると考えますが、
こうした生きものたちが、自らの体内に毒を取り込んだり、
大量に発生したり、共食いをしたりすることなどは、
人間の感情によって起こる祟りや怨霊などとは、まったく関係がなく、
わたし達人間の、固定された狭い概念から発想した嫌悪感や不気味な印象を
押し付けられ、一方的な理由で偏見を持たれてしまう生きものたちは、
とても迷惑な誤解を受けている存在だということに、どうか、気づいてほしいと想うのです。

ジャコウアゲハを食べるハラビロカマキリの幼虫
そんな、片寄った固定観念に囚われないで、惑わされないで、
生きものたちを、観てみましょう!
自然界の中では、人間が、お化け扱いしていることに関係なく、
鳥の様にダマされることなく、そのジャコウアゲハを、クモやカマキリは平気で食べてしまいます。
「変な虫、発見!」そう思ったとき、こども達や、わたし達は、
ホタル館の館長に知らせに行きます。
「うわぁ~、こいつは、凄い!」「良く、見つけたねぇ~!」
私たちが、見つけた生きものを、差し出す度に、館長からこぼれる言葉は、
いつでも自然を楽しむ人に対する率直な感嘆にあふれていて、
わたし達の自然に対する素直な“気づきの心”に明るい光を投げかけてくれます。

ジャコウアゲハの幼虫
自然の中には、私たちにとって、不思議な生きものや、不可解な現象が、
まだまだ沢山ありますが、その答えとして、妖怪や幽霊を発想するということが、
わたし達人間の感情による不安や迷い、悪意や罪悪感から起きているということ、
歴史的背景による排他的な弾圧や、その痛ましさのはけ口として存在していることを
しっかりと認識することは、難解な生物や科学の高度な知識を紐解くことができなくても
自然環境への純粋な関心さえあれば、子どもでも大人でも、
ごく自然に理解することができます。
そして、その上でなら、生きもの達を様々に表現する言い伝えや怖い物語を
人間にしか出来ない、イマジネーションの広がりとして受け取り
その恐怖を、ある意味、「怖いもの観たさ」の感覚で、楽しむことが出来るのではないでしょうか。



↑できるだけ多くの人に読んでいただこうとエントリーしています。
申し訳ないのですが、もし可能であれば2つともクリックして応援をお願いします!

どんなに寒い冬の時期にも、
ホタル館の草原には、蜜源を奪い合うこともなく、蝶が戯れています。

穏やかな花の下で、ハート型に結ばれているのは、ジャコウアゲハの雄と雌。

冒頭で見ていただいた写真の正体は、
実は、このジャコウアゲハのサナギのときの姿なのです。
「つかまえた~。」
ホタレンジャーの女の子は、得意そうに、その黒い蝶を手づかみで次々に、捕まえています。
「それ、毒蝶だからねー!」と笑って、声をかけると、
「ひえぇー!!」と、大慌てで、捕まえて重ねて持っていた3頭の蝶を、振り払っていました。
「食べなければ、問題ないからね~!」

ホタル館に調べ学習に来た清水小学校の男の子達の方は、
女の子達とは、正反対に“毒蝶”と聞いて、思わず記念写真を撮っていました。


ジャコウアゲハは、本州、四国、九州、沖縄から、朝鮮半島、台湾、中国中南部に分布し
沖縄のものは、奄美沖縄亜種、宮古亜種、八重山亜種に分けられています。
そして、ウマノスズクサという蔓性の多年草の植物だけを、幼虫時代に食べて成長します。
日本には、琉球産の2種類を含め6種類もあるウマノスズクサ属は、
その属の学名をアリストロキアといいます。アリストロキア酸は
ウマノスズクサの有毒成分で腎障害(アリストロキア腎症)を引き起こします。

リュウキュウウマノスズクサの花
この毒は、卵から幼虫、サナギ、そして成虫になっても引き継がれ、
体内に生涯蓄積されているため、どのステージの時も
『美味しくないから食べないで!』とでも言うように、とても目立ちます。
目立つだけでなく、その上、簡単につかまえることが出来るのです。
成虫のジャコウアゲハの黒い羽にオレンジ色の目立つ斑紋は、蝶の仲間達からは、
生き残り率の高い毒蝶として知られているようで、最もよく擬態のモデルとして用いられています。

オキナワカラスアゲハ
しかし、そのジャコウアゲハのサナギの姿だけは、さすがにどの蝶も、
真似る事など、絶対に出来ないのではないだろうかと思うほど、見事なシルエット。
人間にとっては、『お菊虫』という幽霊の名前が付けられるほど
不気味な色と形、一度目にすれば、誰もが、絶対に忘れることはできないほど強烈な印象です。


このような生きものの姿や習性などに、人間の発想を重ね合わせて、
おとぎ話や言い伝えが、作られてゆく過程には、戒めや実際の出来事などが、
信憑性を裏付けるように偶然起きることもあって、“ロマン”という受け取り方なら
害も無く、楽しめると考えますが、
こうした生きものたちが、自らの体内に毒を取り込んだり、
大量に発生したり、共食いをしたりすることなどは、
人間の感情によって起こる祟りや怨霊などとは、まったく関係がなく、
わたし達人間の、固定された狭い概念から発想した嫌悪感や不気味な印象を
押し付けられ、一方的な理由で偏見を持たれてしまう生きものたちは、
とても迷惑な誤解を受けている存在だということに、どうか、気づいてほしいと想うのです。

ジャコウアゲハを食べるハラビロカマキリの幼虫
そんな、片寄った固定観念に囚われないで、惑わされないで、
生きものたちを、観てみましょう!
自然界の中では、人間が、お化け扱いしていることに関係なく、
鳥の様にダマされることなく、そのジャコウアゲハを、クモやカマキリは平気で食べてしまいます。
「変な虫、発見!」そう思ったとき、こども達や、わたし達は、
ホタル館の館長に知らせに行きます。
「うわぁ~、こいつは、凄い!」「良く、見つけたねぇ~!」
私たちが、見つけた生きものを、差し出す度に、館長からこぼれる言葉は、
いつでも自然を楽しむ人に対する率直な感嘆にあふれていて、
わたし達の自然に対する素直な“気づきの心”に明るい光を投げかけてくれます。

ジャコウアゲハの幼虫
自然の中には、私たちにとって、不思議な生きものや、不可解な現象が、
まだまだ沢山ありますが、その答えとして、妖怪や幽霊を発想するということが、
わたし達人間の感情による不安や迷い、悪意や罪悪感から起きているということ、
歴史的背景による排他的な弾圧や、その痛ましさのはけ口として存在していることを
しっかりと認識することは、難解な生物や科学の高度な知識を紐解くことができなくても
自然環境への純粋な関心さえあれば、子どもでも大人でも、
ごく自然に理解することができます。
そして、その上でなら、生きもの達を様々に表現する言い伝えや怖い物語を
人間にしか出来ない、イマジネーションの広がりとして受け取り
その恐怖を、ある意味、「怖いもの観たさ」の感覚で、楽しむことが出来るのではないでしょうか。



↑できるだけ多くの人に読んでいただこうとエントリーしています。
申し訳ないのですが、もし可能であれば2つともクリックして応援をお願いします!

Posted by satou-n at 21:30│Comments(2)
│ホタルとつながる生きもの達
この記事へのコメント
ジャコウアゲハについてたいへん勉強になりました。
「山女郎」という呼称ははじめて知りました。
「山女郎」という呼称ははじめて知りました。
Posted by 七里 at 2009年09月16日 06:31
七里さん、コメントありがとうございます。
ジャコウアゲハは、久米島ホタル館で、多く見ることのできる昆虫です。
ぜひ、久米島へも遊びに来てくださいね。
ジャコウアゲハは、久米島ホタル館で、多く見ることのできる昆虫です。
ぜひ、久米島へも遊びに来てくださいね。
Posted by satou-n
at 2009年09月18日 21:53

※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。