5月最後のホタル観察会

satou-n

2010年05月29日 21:03

「ここって、ホタルを見れるんですか?」と、怪訝そうに訪ねられたのは、

一人旅の女性旅行者でした。

「いえ、ここは、ホタルの生息環境やその保全について解説しながら、

この小さな島の小さな生きもの達の、多様なつながりを知ってもらう施設です。」

と、応えると、少し迷いながらも、入館料の100円を払い、中に入ってくれました。


   星状毛がついたクロイワボタル





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そして、小さな生きもの達のつながりが、私達人間にもたらしてくれる

空気や水や土という、大きな恩恵についての話を、熱心に聞いてくれました。

その後、「ホタルが見れるなら、ぜひ、見てみたい。」と仰るので、

夕方8時に、まだ、クロイワボタルが数匹、生き残っている

五枝のマツ園地で、待ち合わせをしました。



約束の時間になると、最盛期には、サトウキビ畑の中や外にまで飛び出していた

沢山のクロイワボタルは、本当に数えるだけしか残っていませんでしたが、

その少ないホタルたちの飛び交う姿が、返って、印象深く、

私自身にも、お客様にも、一味違った、ホタル鑑賞会になりました。



数の少ないホタルを追って、久間地の集落まで歩くと、ヤギ小屋の近くで、

小さな灯火が見えます。

そっと、手に取ると、寿命を終えたホタルの燃え尽きようとする残り火でした。



ホタルの光は、ルシフェリンという発光物質と酸素が結びつく化学反応で光ります。

その化学反応を触媒するのが“ルシフェラーゼ”という酵素で、

その酵素は、ホタルの種類によって少しずつ違うそうです。



腹部先端にある“発光器”、クロイワボタルは腹部後半3節がそれにあたります。

その発光細胞には、発光に必要な酸素を送り込むための気管と、

その供給を調節するための神経があり、神経の調節で光を明滅するのですが、

ホタルが死んでしまうと、その機能が停止し、ルシフェリンと酸素がなくなるまで光り続けます。



そう、説明しながらも、私の手の中のホタルの小さな光は、

「まるで、ダイヤモンドみたいね。」と、お客様がつぶやくように、とても、きれいでした。

彼女は、久米島での旅の印象が、予想とは違っていたことへの不満や

私が案内するまでの夜の五枝のマツ園地や周辺の集落を、

つまらない、寂しい場所のように感じていたそうですが、



「ホタル達にとって、夜の闇がしっかりと存在する、こうした静かな集落は、

パートナーを見つける為に、とても重要で、必要な場所なんです。」と、言うと、

「そうね、自然って、人間だけの考えを押し付けちゃ、いけないわね。

今夜は、最後のホタルを見せて下さって、ありがとう。

久米島に来て、本当によかったわ。」と、清清しく帰っていかれました。



彼女を見送った数十分後、ぱらついていた小雨が止んで、

雲に隠れていた月の明かりが、ほんのりと辺りを包み、

我が家へ続く、見慣れた道を、労うように、優しく照らしてくれました。





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