近づくと、羽根を広げるしぐさをするので、
「飛ぶよ。」と声を上げると、
周りにいた子どもたちから、「飛ばん、飛ばん。」と、教えてもらいました。
それなら、なんとかなるかもと、持ってきた大きな段ボールを、切って広げ
壁のように立てかけながら、ハクチョウが逃げるスペースを徐々に狭めながら、
タイミングを見計らって、頭を覆うように上着を被せて、大きな体を押さえこみました。
灰色の体色から幼鳥だと判断出来ますが、身近な鳥ではないオオハクチョウは、
とても大きく感じるし、逃げられないように捕獲しようと考えると、
益々、緊張しましたが、口元の出血と、飛べないという状態は、
このハクチョウの子どもにとって、命にかかわる緊急事態だと思い必死でした。
当日は、日曜日だったので、沖縄県の自然保護課に連絡できるのは、
明日以降になると判断し、保護したハクチョウは、イベント終了後に、
ホタル館で保温しながら様子を見て、翌朝、沖縄本島の動物病院へ空輸しました。
離島の野鳥保護のために、県自然保護課の担当の方々やJTAの空輸を支えるスタッフの皆様の
お蔭で、これまでもたくさんの野鳥の命が救われてきました。
本当にありがとうございます。
この時期は、ハクチョウだけに関わらず、野生の水鳥たちは、ごくごく稀ですが、
鳥インフルエンザを保菌している可能性もあります。保護の際も、輸送の際も
最善を尽くして安全に保護・輸送できるように心がけています。
でも、元気なのに保菌している場合もあるので検査は欠かせません。
保護したハクチョウは、インフルエンザは陰性で大丈夫との連絡があり安心しましたが、
ケガをした上、酷い空腹状態で衰弱し、ハクチョウの容体は非常に悪いとのことでした。
通常、野生の鳥のインフルエンザが
直接人に感染するという事は、ごく稀な場合を除き、起こりませんが、
感染した鳥の糞が、人の靴底や、車両の乗り入れの際に張り付いて、
鳥小屋や養鶏場などに運ばれると、小鳥やニワトリ、アヒルなどがインフルエンザに感染する
可能性が高くなります。東南アジアや中国などでは、豚などの家畜やペット、
生きたニワトリ、アヒルなどとの間で変異が進み、高病原性鳥インフルエンザウィルスへと
変異してしまう事が知られています。
そのような問題のある保菌鳥が久米島にも飛来する事も、想定しておかなくてはなりません。
「まさか、ひやぁ~。」と軽んじる気分は、誰しもありますが、
万が一、事態が深刻になった場合を想定し、備えることは大切です。
ハクチョウを捕獲保護した現場の近くは、農業用のため池やダム湖があり、
冬の時期には、野生の渡り鳥が多く飛来します。ダム湖には本来人が入り込むことはないので、
人との接触はないのですが、カンジンダム湖では、湖内に造られた浄化施設である棚田維持の
ために、人の立ち入りを想定していますので、通常は、できるだけ人との接触を避けるために、
人を立ち入らせない配慮をしてもらっています。
久米島の自然環境を保全する事や、地球環境の生きもの達の生態系バランス
やシステムにとって、季節ごとに渡り鳥が、この島に利用し飛来することは避けられません。
しかし、この時期は、鳥インフルエンザの発生の危険も増すため、
私たち人間は、野生の生きもの達との賢い関わり方で、身を守る必要があります。
草刈りなどの管理作業はもちろん、人や車など、ダム湖周辺への出入りはできるだけ避けて、
静かに見守る時期として考えています。
また、飛べない野生の鳥を見つけた場合は、むやみに捕獲をせずに、
とにかく早急に、役場の環境保全課か、久米島ホタル館へ連絡してください。
生きもの達の命は、発見と治療が早ければ、助かる可能性が高くなりますし、
私たち人間の暮らしにとっても、目に見えない危険な状況を最小限に抑え、
拡散することなく回避する事が可能になります。
ぜひ、多くの皆さまの御協力をお願いいたします。
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