アカハラダカ

satou-n

2008年10月06日 17:49

知り合いの方から

「今、変な鳥を、保護したんだけど、ホタル館に届けていいですか。」

と、連絡が入りました。

「変な鳥って、どんな鳥?」と聞くと、

「身体の大きさも色もハトみたいで、顔は、ワシみたいに獰猛そうなんです。」

そう言われて、ピンときたのは、秋の渡りでこの島を訪れるアカハラダカでした。



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ホタル館に届けられたのは、間違いなくアカハラダカのメス。

きれいな黄色の虹彩と、胸から腹にかけての名前どおりの赤っぽい羽毛。

こんなに間近で見るのは、初めてでしたが、本当にきれいな鳥でした。

アカハラダカは、全長30cm、ツミに良く似た小さなタカで、朝鮮半島で繁殖し、

東南アジアなどで越冬するのですが、その渡りの途中、沖縄を通過するようです。

久米島では、アカハラダカの後に、サシバがやってくることが、よく知られています。

このアカハラダカが保護されたのは、子ども達が川遊びを兼ねた生きもの探しの最中でした。



9月から10月は、久米島ホタル館で、川に入り、生きものに触れることや、

観察のために捕まえて、飼育したりする課外学習の機会が、多くなります。

この日は、久米島幼稚園と、小学校の1,2年生の子ども達や保護者の皆さんが、

時折激しくなる雨の中、「どうせ、濡れるから♪」と、体験活動を続けていました。




「これは、まだ子どもだはずねぇ。」とか、「ムカシンチュウ(昔の人)だったら、食べてるさぁ。」とか、

届けてくれた島人や、子ども達のお父さん達が、それぞれ、アカハラダカを見ながら

思い思いに、話をしています。


  保護され、ホタル館に到着したばかりのアカハラダカ

そこに、川遊びを終えた子ども達も集まって来て、「ねえ、どうやって捕まえたの?」

「私も飼いたいな~。」と、保護されたアカハラダカや、ホタル館で一時保護している

ツバメやスズメの小鳥たちについても、質問や疑問が、次々に出てきました。


  ツバメは、現在、長嶺動物クリニックで手当を受けています。


スズメは、8月1日に雛が保護され、31日から飛翔訓練を開始。10月5日に無事放鳥しました。

地球上の様々な場所に渡って来る鳥達は、

春や秋の季節風(偏西風やジェット気流)に乗って、大陸や島々を何千、何万キロも旅をします。

その食べ物の昆虫は、大量に生まれ育つハエや蚊、バッタやイモムシなどです。

春から夏にかけての北半球では、様々な植物が芽吹き、新葉を展開させ、花を咲かせます。

そのため、ものすごく大量に昆虫が育ち、発生することになります。

この植物や昆虫をもとめて、様々な小動物が多く繁殖することができます。

もちろん、鳥たちの子育てにとっても最高の季節になるのです。


   7月、リュウキュウサンコウチョウの子育てが見られました。

そして、秋になると、冬でも食べ物が多い南の地に鳥たちは渡ってきます。

沖縄では、両生類のカエルや爬虫類のトカゲやヘビ、猛毒のハブさえも、捕食されます。

農作物を食い荒らし、病原体を媒介する対象である外来侵入種の哺乳類のネズミの繁殖も、

生態系の頂点に立つ猛禽類のチョウゲンボウやフクロウ達の獲物として、大量に捕食されるため、

こうした鳥たちの訪れは、私達人間にとっても、非常に好都合で、相利共生的関係を持ち、

地球環境の仕組みとしても、福利とサービスをもたらす非常に大切な役割を果たす例として

理解しやすいのです。


   クマネズミを捕食するコミミズク

しかし、農薬(除草剤、殺菌剤、殺虫剤)の広がりや大量使用によって、

こうした食物連鎖のつながりと、その大切な役割が絶たれていることを、

人間の営みから渡り鳥達との関わりが、離れることで、人間にとっても必要な

生態環境リスクの増大に気づくことが出来なくなってしまい

鳥に対する関心は、私達人間にとって、

愛鳥家や研究者だけの問題と考えがちになってしまいます。


  保護されたアカハラダカ

まして食物連鎖の生産者や消費者だけでなく、生態系を維持する生きものである分解者の存在

(落葉や死骸、糞などを粉砕・分解する、表土や水底などに生息する生きもの)を、

大切にすることを忘れ、繋がりあう生きものを支え、支えられている生きもの、

それを受け継ぐ生きものなどのの存在が、現在、本当に軽視されていると思うのです。




ホタルの会のこどもホタレンジャーでは、水中の生きものだけでなく、陸生ホタルの幼虫が生息する土の中の生きものも、みんなで調査しています。

近年、渡り鳥の、旅の疲れを癒してくれる安全な休息地である森や河畔林の樹木が、

たった数十年で、広大な農地や住宅地に変わっていくことで、生息環境が奪われ、

絶滅にまで追い込まれていくことを、人間が生活するためには、仕方の無い事だと

開き直る前に、心を留めて、考えてくれる人々がいなければ、

生きものたちは、本当に消えていくかもしれません。

そして、自然の生きものたちに依存している

私達人間も、最後には自然な本来の姿では生きてゆけなくなくなってしまう

そんな悲惨な地球環境になってしまうかもしれないのです。



こうした問題を解決するためには、何よりも自然に興味・関心を持ち、

その関わり方や考え方の基本となる、全ての生きもの達と私達人間が、

共につながり、支えあっている事を、真に理解してほしいことを、

今の私が、できる限り精一杯の想いを込めて、話しをしました。

ホタル館で、一時保護、あるいは飼養している鳥たちは、捕まえられたのではなく、

生きものを助けたいという願いを託されて、持ち込まれたものです。



その全ての生きもの達が、助かるわけではありませんが、

こうした関わりに携わり、時に辛く切ない日々を、ひたすらに乗り越えながら、

生きもの達の現状を訴え続ける事は、手を差し伸べてくれる多くの専門家や、

実際に力を尽くしてくださる獣医師達の協力を、励みと受け取り

生きものたちの尽きる最後のぬくもりに込められた、命のメッセージを

一人でも多くの人に届ける事が、私たちの子孫のものである未来の地球環境のために

現時点で変える勇気と、今希望の種を蒔くことにつながると、心から信じているのです。



幼い頃から、身近に自然を感じたり、触れたりすることで、

私たち人間には、自然を理解する素地が、作られるのだと想います。

この日、アカハラダカに出会えた偶然を、子ども達と共に分かち合えたことを

心から感謝し、これからも大切にしてゆきたいと考えています。



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