2012年10月07日

自然を守る事は、本物の人の暮らしを守る事

水土里の路ウォーキングのシンポジウムに参加した方々に配った資料は

8年前に、ホタル館の館長が、クメジマボタルの保護について、議員から質問を受け

少しでも議会資料になればと、参考にしてもらうため当時の考えをまとめたものです。

おそらく、当時も必要であった提案ですが、カンジン棚田の作業がまだ一度も始まっていない

時期に書かれた文章ですが、今一度、この島の将来を真剣に考えてもらうために、

読んでいただきたいと想います。

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クメジマボタル保護について(H16年6月) 

S議員のご指摘の通り、赤土の流出はクメジマボタルの生存を危機に陥れています。

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赤土流出は大規模な土壌流出をともなうため、畑や牧草地の地力を低下させ、

農地の生産力の低下にもつながります。

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影響は農地にとどまらず、河川から海洋へとおよび、自然生物のみならず、

自然の観光資源までをも劣化させ、河川や海の生きもののゆりかごとされる干潟を埋め尽くし、

サンゴ礁を破壊し、海洋資源を激減させ、沿岸漁業やモズクや

クルマエビなどの栽培へも悪影響を及ぼします。

結果的に海洋レジャーやダイビングなどの業種に至るまで重大な悪影響を及ぼしていきます。

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真っ赤な赤土むき出しの島と海洋の景観では誰も訪れないばかりか、

産業基盤が落ち込み島に住む人さえままならないといった悪夢が、

近い将来、現実のものにならないという保証は全くありません。

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白瀬川(長さ5.3km、流域面積7.0平方km)は島で最大のクメジマボタルの生息地です。

しかし、白瀬一号ダムと二号ダムによって生息地は大きく分断されています。この2つの

ダムの水が合流するダム直下の流域で、1993年にクメジマボタルが発見されました。

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発見者である木村正明さんはその年、数千匹のホタルが舞っていたことを

後に証言しています。また、その翌年も、千匹を越えるホタルが舞いました。

写真家の湊和雄さんは、この光景を撮らえています。

このダム直下のクメジマボタル最大の生息地が、1994年に始まった

白瀬二号ダムの改修工事によって、土砂と赤土が大量に流域に流出し大打撃を与えました。

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その年を境にホタルの発生が一桁以上減少したといわれています。

現在も、影響を受ける前の状態には回復していません。

なぜなら、その後も(1995年以降)白瀬川の源流域では、サトウキビ畑の更新や

広大な牧草地への改良事業が行われていたからです。

白瀬川の源流域には現在も広大な牧草地とキビ畑が広がっています。

また、新たに牧草地を広げる事業も始まっています。

急傾斜地に囲まれた山地の奥深い場所での耕作は、

雨が降れば必然的に土砂や赤土流出の原因になります。

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最近では、2003年4月12日の大雨の際に、大量の赤土がダム下流側にまで流出しました。

そのため翌年の中流域でのホタルの出現は、前年に比べ減少してしまいました。

赤土の流出状況が今後も改善されない限り、ホタルの減少傾向は続くと予想されます。

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また、クメジマボタルと生息地がほぼ重なっているキクザトサワヘビの保護区(管理区域)は、

白瀬川の一部の支流や源流、浦地川、仲地川の源頭部だけであり、

多くのサワヘビの生息地が保護区(管理区域)外におかれています。

しかも、昨年までは赤土対策が十分に行われないまま、大型重機による開墾が

広く行われたため、大量の赤土や土砂が周辺の森にそのまま排出されていました。

現在は組合の事業はかなり改善されましたが、

個人の畑での開墾はまったくの対策なしで行われています。

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特に白瀬川の源流や上流域に広がる畑地や牧草地は、保護区の中に広がっているだけに、

その流域だけでなく、保護区全域への影響が心配されます。

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急傾斜地に広がる源流や上流域の農地からは、絶えず大雨の度に肥料や農薬が、

開墾・改良時には土砂や赤土が大量に流出する可能性が高いからです。

また、管理が十分でない牧草地や畑地も多く、大雨の度に赤土が大量に流出しています。

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また、源流域での大規模な農地の開発は、キクザトサワヘビやクメジマボタルの保護にとって

脅威であるばかりでなく、ダムの寿命を縮め、水質悪化の原因になるとも考えられます。

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特に白瀬川は国内で唯一の貴重なホタルとヘビの最大の生息河川であるだけに、早急な

保護対策が急がれます。現在、久米島町文化課では隣接する小河川である浦地川で、

広大な土地改良区からの赤土や土壌流出防止のための対策を検討中です。

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それは、従来の赤土対策に加えて、沈砂地下側の畑地を湿地や田んぼ、池などに造り替え、

流れ出した赤土や土壌を受け止める、河川とは別の人工流域を造って、

赤水を河川に流さない大規模な対策を検討し計画しています。これがうまくいけば、

他の河川や最大河川である白瀬川への赤土対策への適用も可能であると考えます。

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また、質問者であるS議員のご指摘の通り、可能であるなら農地の整理をおこない、

河川上流から源流に当たる急傾斜地やその上部につくられた畑地や草地を、

影響のもっと少ない場所(中流から下流域周辺の傾斜地の緩やかな場所、あるいは

台地部や平地部)に農地を移す、土地改良区の休耕農地と交換するなどの方法で

この場所からの農地の撤退を考慮する必要もあるでしょう。

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赤土を出さない産業として、久米島紬産業の積極的な育成を図ることも視野に入れて、

交換後この地を有効に活用することも可能であると考えています。

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染色に使うオキナワスダジイやヤマモモ、ナカハラクロキ、オキナワサルトリイバラ、

オキナワシャリンバイ、オオハマボウ、フクギ等の栽培を、この地に積極的に導入しては

どうでしょうか。

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さらには、カイコの栽培も視野に入れて、農薬を使わないカイコの飼育用の

クワや、天蚕の飼育用の在来植物(ブナ科、ナラ科、クスノキ科等)の植栽を行うことを

検討していくことも考えられます。

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今年の5月3日にクメジマボタルの密猟事件が起こりました。

他にもクメジマボタルだけでなくキクザトサワヘビやクメトカゲモドキ、リュウキュウヤマガメなど

も密猟の危険があるとされています。これまでにも増して、厳しい監視の目が必要です。

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現在、キクザトサワヘビは種の保存法に基づく保護区(監視地区)の定期的な流域監視

パトロールがおこなわれています。しかし、それ以外の天然記念物や貴重な生きものについて

は、法的な監視パトロールの仕組みがありません。現在進めつつある、県や町の文化課、

サワヘビ監視員、住民、警察あるいは基地内の監視に当たる自衛隊などとの密接な協力体制

をしっかりと作り上げ、密猟を防ぐネットワークを築き上げるための取り組みをより緊密に行って

いきたいと考えています。

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将来的には新たな法律の整備を行うなどの取り組みが必要になるでしょう。

その際、天然記念物や貴重な生きものの環境を守るため、密猟防止だけでなく、

不法伐採や不法開墾、赤土流出、不法投棄などの情報を機敏に交換でき、

対策が図れる法律や体制の組織化も必要になってくるでしょう。

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久米島をクメジマボタルの楽園として復活させるためには、流域ごとに水田や湿地を復元・

再生し、幼虫やホタルの成虫が生息できる小川(自然な水路)を蘇らせる取り組みが必要

です。その取り組みが、現在すでに一部の流域で始まっています。

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ホタル館周辺では、流域全体をホタルの舞う環境として整備し、ホタルの里としてふさわしい

環境にすることを計画しています。また、3つの集落の中を流れる仲地川、久間地川など

四河川の下流側にある広大な窪地(ウバーレ)を堰き止めて造られたカンジンダムでも、

湖内に広大な棚田と水路を整備しています。流域の生活排水や畜舎の排水、

畑からの肥料などがこのカンジンダムに大量に流入するため、ダム湖の水質が悪化することが

予想されました。そこで、水質浄化を目的に湖内へ棚田と水路を整備しました。

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流入する水を浅い水域で長時間かけてゆっくりと流すことで、そこに住む生きもの(微生物や

藻類、水草、稲やヨシ等の植物、水生昆虫、水生小動物など)に富栄養物(汚れ)を分解、

吸収してもらい、人が刈り去ることで、あるいは人や食物連鎖の頂点に立つ生きもの

(鳥やヘビなど)が湖外に持ち去ることで、結果として富栄養物を少なくする(汚れを浄化する)

事が目的です。

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元々、ホタルのために造った構造物ではありませんが、水路は、クメジマボタルが生息する

ことも想定して作られています。もちろん、ダム湖内の棚田での稲作は無肥料、無農薬で、

可能なら不耕起栽培でおこなわなくてはなりません。また、生活排水の下水道施設への導入、

畜舎からの排水の規制、畑地からの肥料や農薬流出防止も図りながらの事業であるため、

住民の理解と協力が不可欠です。100年に一度の確率で数時間水没する可能性のある場所

ですが、ホタルの代替生息地としての取り組みに大いに期待して、しっかりと整備を続けて

いきたいと考えています。

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久米島町はホタルを人工的に増殖して人に見せるのではなく、ホタルのすめる環境を復元する

事業(ホタルの里自然公園)を島中に展開する取り組みを行っています。現在、ホタル館周辺を

ホタルの舞う環境として整備し、流域全体をホタルの里としてふさわしい環境として造り替える

計画を立てています。ホタルの里の整備はホタル館周辺だけでなく、五枝の松―カンジン地域

周辺や北原の海岸段丘、白瀬川下流域―チナハ御嶽周辺、島地の森散歩道―ホタルデッキ

白瀬川中流域など、現在ホタルが数多く出現している地域を中心に順次優先的に追加整備を

行うことを目的としています。久米島ホタル館は、多くのホタルインストラクターを養成し、

将来は自然の豊かさと自然管理の方法を現場で直接学ぶエコツアーのホタルインストラクター

も育てたいと考えています。

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自然環境の保護・保全を目的とするにとどまらず、観光資源としても利用できるため、

島の経済に多大な貢献をするようになるでしょう。ホタルはお年寄りや小さな子供、

虫嫌いの人までも、これだけは特別の存在として好きな生きもののひとつに、

取り上げてもらえる為、島の自然を知る扉の役割を果たしてくれます。そのため、

ホタルから島の自然を知る大きな動機づけ(きっかけ)となり、山や森、海のエコツアー

にも直接つながっていき、さらには、島の農家の生活そのものを知るツアー

(グリーンツーリズムなど)との連携も可能になるでしょう。昨年開かれた「全国ホタル

研究大会久米島大会」は全国のホタル研究者、ホタル愛好家、ホタルの会などの

方々に大きな反響を及ぼしました。

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今年は、富山県高岡市で開かれましたが、懇談会の時に多くの人が「昨年久米島では

お世話になりました。とても楽しい大会でした。その後、ホタルの保護への取り組みは

進んでいますか。」と声をかけて頂きました。議員の質問用紙のある「全国ホタルサミット」

の開催も計画しながら、ホタルを自然回生のシンボルとして位置づけ、全国の方々が

久米島に注目してもらえる取り組みを行っていきたいと考えています。クメジマボタルの

個体数の減少と生息環境のこれ以上の悪化を防ぐためにも、これらの対策を早急に

図らなければならないと思います。この取り組みの成功は、種の保存法でかつて緊急

指定種に指定されていたクメジマボタルの保護にも必ず役に立つと考えます。

また、久米島に生息する貴重な生きものや種の保存法に指定されているキクザトサワヘビ

の保護にも役に立つと確信しています。ホタルの小さな光こそが久米島の未来を大きく照らす

との強い思いで取り組みたいと考えています。

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