2008年09月14日

ヤジャーガマの洞窟探検

台風の接近に伴った、久しぶりの雨に、山の緑がホッと一息をついているようです。

風の強い、うす曇の空には、いつもの小鳥達が、飛び交う事はなく、森の奥に潜んで、

嵐の過ぎ去るのを、じっと待っているのでしょう。

自然の生きもの達が、身近に感じられるこの島の空港の近くには、大きな鍾乳洞があります。

この夏、ホタルの会では、ホタレンジャーと一般参加者の交流体験として

初めてのヤジャーガマの鍾乳洞探検を行いました。

ヤジャーガマの洞窟探検

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ヤジャーガマの洞窟探検

洞窟探検の講師には、久米島文化センターの上江洲盛元館長が

手刷りの資料を携え、快く引き受けてくださいました。

ヤジャーガマの洞窟探検

上江洲館長の説明によると、昭和51年6月に旧具志川村の史跡として指定され、

平成15年からは、久米島町の文化財となったヤジャーガマ遺跡は、

全長800mの鍾乳洞で、3箇所ある開口部には、貝塚があり、洞窟の中からは、

貝塚時代後期系の土器やグスク時代初期の土器や貝製品

徳之島産の類須恵器、それに炭化米や炭化麦などの出土品が多様に出土する

とても重要な遺跡だそうです。

そのヤジャーガマ遺跡の洞窟は、琉球石灰岩の鍾乳洞で、出来ています。

鍾乳洞は、もともと海の中にあるサンゴが、固くくっついて石灰岩化した場所が、

隆起して陸地になった後、雨が染み込む作用を長い年月受ける事で、空洞になり、

落ち込んだところが入り口となって出来ました。

ヤジャーガマの洞窟探検

地形的に、琉球石灰岩が多い沖縄には、大小さまざまな洞窟があり、その成り立ちや

そこに生息する生き物たちなどへの興味は、尽きないものがありますが、

沖縄戦での避難場所として、悲惨な記憶を背負わされたガマ(洞窟)の存在は、

島の人にとっては、踏み入ってはいけない神聖な場所として、強い印象を持っています。

こうした、複雑で、深い思いを上江洲館長から拝聴した後、

私達は、厳かな気持ちで、ヤジャーガマ洞窟に入りました。

ヤジャーガマの洞窟探検

整備されていない洞窟の琉球石灰岩のゴツゴツとした部分に、

不用意に手を触れたりすると、結構痛いので、気をつけるように注意をしながら、

用意した懐中電灯を暗い洞窟に向けて、大きく開いた入り口から、

ドームのようになっている中を、一列に並んで、ゆっくりと進んでいくと、

数分後には、何本かの柱に支えられた、比較的広い場所に出ました。

ヤジャーガマの洞窟探検

そこには、祭壇のように設えられた場所があって、お賽銭らしい小銭も落ちていました。

踏み固められた地面は、座っても横たわっても痛くはないため、

戦時中は、きっと、この場所で、多くの人が息を潜めて、戦の去ることを祈っていたのでしょう。

ヤジャーガマの洞窟探検

「僕が、戦争体験談を、ガマの中で語る時には、その当時の人々の苦労を

少しでも体験するために、一瞬明りを消してもらうのですが、ここでも、ぜひ、やってみましょう。」

と、上江洲館長の提案に、私たちは、それぞれが手にした懐中電灯を消してみました。

どんなにいっぱいに目を見開いても、何一つ見えません!

息を止めているわけではないのに、なぜか、とっても息が苦しくなりました。

ヤジャーガマの洞窟探検

そして、太陽の光が届かない真っ暗な洞窟の閉鎖空間の中で、

ここにいる全員が、日の出から日の暮れるまでの一日を、

共に過ごしているような錯覚に、一瞬陥る、不思議な気持ちになりました。

「はい、いいですよ。」その言葉を、待てないくらいの速さで、

懐中電灯の明りが、パッ、パッと、点いてゆくと、子ども達は、もとの賑やかな様子に戻り、

再び、明りを暗い洞窟の奥に向けながら、進んでいくことができます。

ヤジャーガマの洞窟探検ヤジャーガマの洞窟探検

しばらくして、子ども達が、「しーっ、何か聞こえる、静かにして!」と、言い出しました。

よーく、耳を澄ますと、小さくて甲高い音が聞こえます。

「コウモリだ!」「うっそだぁー!」「いや、ホント、本当にコウモリがいる~。」

ヤジャーガマの洞窟探検

懐中電灯を上に向けると、高い天井に黒くて小さな生きものが、

張り付いているかと思うと、バタバタと、飛び回っています。

ヤジャーガマの洞窟探検

興奮して大きな声を出したり、明りを当てすぎると、コウモリ達に影響するので

コウモリについての説明を、ホタル館の館長から聞いた後、

私たちは、速やかに、この場所から移動しました。

ヤジャーガマの洞窟探検

ここは、オキナワコキクガシラコウモリと

リュウキュウユビナガコウモリがねぐらにしている場所です。

この2種類のコウモリは、RDBで絶滅の危険性が高い絶滅危惧ⅠB類に掲載されていて、

オキナワコキクガシラコウモリは、以前は千頭を超す数が確認されていましたが、

1987年時点でなんとわずか十頭ほどに激減しています。

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  オキナワコキクガシラコウモリ

リュウキュウユビナガコウモリに至っては、1978年にわずかに3頭目撃されているだけです。

激減した原因として指摘されているのは、

洞くつ周辺での土地改良事業などによる大規模な森林伐採や、

観光化による頻繁な人の出入りが原因ではないかということです。

コウモリのねぐらである洞くつに、頻繁に人が入ることは、絶対に避けなければならないことです。

ヤジャーガマの洞窟探検

そこから先には、開口部があり、外の明るい光が洞窟内にやさしく降り注いでいました。

洞窟内には、一切生えていなかった緑の植物が、

目に痛いほどの鮮やかさで、飛び込んできたとき、正直、とってもホッとしてしまいました。

ヤジャーガマの洞窟探検

光への感謝は、こうして光のない世界を垣間見る事で、増幅されますし、

コウモリなどの生きものが、自分達とは、異なった環境で生存していることを知る上でも

生きもの達に対する感動が、私達の生存している地球の奥深さを教えてくれます。

私たちは、人間として生きていく過程の中で、もっと地球の事を、

そして、そこに生存する生きもの達のことを、利用ではなく、理解することに

関心を寄せる努力をする必要があると考えています。

ヤジャーガマの洞窟探検

昨年度でようやく閉じられた観光洞くつヤジャーガマの、その静かな佇まいが破られ、

再び、修学旅行の体験学習という名の下で、観光のために利用する計画が持ち上がっています。

この鍾乳洞が、コウモリを始め、洞窟でしか生存できない生き物たちの

唯一の生息環境である事が、なおざりにされないように、

私達ホタルの会は、見守り続けたいと思います。

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