2008年04月10日

危険な生きもののハブ。

最近、久米島ホタル館を訪れる方々の中には、

様々な生きものに興味を持った方々や、

外国の方々も、多く訪ねてくれるようになりました。

ホタルとホタルにつながる生きもの達を紹介する案内の中で、

特に多くの人の目を引くのは、危険な生きものである『ハブ』の存在です。



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久米島には、沖縄本島と同じ様に、ハブが生息しています。

その上、この島には、独特の久米島だけにしか見られない模様のハブが存在しています。



ずいぶん前のことですが、私の兄が、沖縄本島の通称“ハブ支所”に勤めていたこともあって、

そのハブ支所に頻繁に出入りしていた頃は、ずいぶん沢山のハブを目にしたものです。

それでも、金網の中で見るハブの区別は、同じハブといっても

昔から地色の違いによって区別されてきた、黄色を帯びた金ハブと、

鈍く白い光沢の銀ハブくらいしか見分けることができなかったのですが、

この久米島のハブは、柄そのものが異なっており、沖縄本島の派手な格子柄ではなく、

サイドに模様が無いことが大きな特徴であり、

地色も黄色や緑色を帯びたものも多く、地味というよりは、

シンプルで、非常に上品な縦じま模様をしています。


      沖縄島型のハブ                      久米島型のハブ

見ているだけなら、そういう印象も、ある意味、美しいと表現できるのですが、

実際には、咬まれたら、死んでしまうという危険性を秘めているため

この生きものは、蛇の中でも特に、その存在自体を、多くの人々から疎まれています。

沖縄県では、以前、ハブを買い取る制度を設けることで、ハブの数を減らそうとしていましたが、

ハブを取るために怪我をする人や、死亡する人が後を絶たないため

復帰後の様々な衛生動物に対する制度の改正により、

現在では、ハブから人が身を守るための対策として、

ハブが住み着かないように石垣の穴を埋めたり、ネットをかけたり

又、ハブのいそうな場所にトラップを設置して捕獲し、取り除いたするための指導や

その対策をより有効にするための研究を行っています。



時折、「ハブを獲らなくなってから、ハブが増えたさぁ~。」と言う声を耳にしますが、

その本当の原因は、他のヘビに比べて、餌となるネズミの供給が、

特に、クマネズミやハツカネズミ(茶色毛の野生種)などの外来種のネズミの繁殖が

人の暮らしの中で非常に多くなっていることを見落としています。

そのため、自然環境が消滅してゆく中で、他の生きもの達が急減していく中、

ハブは、ネズミをたくさん補食しているために、相対的に減り方が少ないことを

多くの人に気づいてほしいと考えています。

また、ネズミはサトウキビや牧草の新芽も好んで食べるため、サトウキビ畑や牧草地は

ネズミにとっても格好の住処になってしまいますし、牛に与える飼料も大好物ですから

牛舎にも住み着いてしまいます。

ハブの活動の鈍い冬場には、久米島で冬を越す、チョウゲンボウやコミミズクが、

このネズミを盛んに捕食します。



最近、牛舎でのフクロウ類の目撃が多くなっているのも、

こうしたネズミの繁殖と関係していると思います。

そして、畑や牧草地、牛舎周辺でのハブの目撃も増えているといわれています。

海岸では、バーベQの残り物や、弁当の残飯などを周囲の原野に捨てていく行為

もちろん、魚やカニの餌になると思って海に捨てても、波で打ち上げられ、それを食べる

カニやヤドカリまで含めて、ネズミが捕食してしまいます。

不法投棄されたゴミ捨て場は、ネズミとハブの巣窟になってしまいます。

久米島には、もともとハブが生息していましたから、これらのネズミを捕食することで、

農作物の被害や伝染病をもたらすネズミの害を緩和していたことや、

自然環境の微妙なバランスを保っていることを、理解できるなら、

わざわざ、山のハブを追いかけて撲滅するのではなく、

畑や牧草地、牛舎のなどに棲むネズミを駆除し、

ネズミを増やすような、ゴミの不法投棄をやめさせることだと考えています。



畑や牛舎、民家に侵入してくる危険を取り除くためのハブ対策として、

ハブトラップやハブ防御ネット(ハブ返しの囲い)を使用する事を進めています。

そのため、久米島ホタル館では、町の環境保全課と協力して、

ハブを捕獲するためのトラップの使用に備えて、必要なネズミの飼育も、引き受けています。



ホタル館で、ハブを飼育し続けることや、ハブを捕獲するためのトラップを仕掛けるためには、

本当に、言葉に出来ないほどの心の葛藤を繰り返しながら、

生きもの達の命の片鱗を、見つめ続けて毎日を過ごします。

多くの人々は、こうした毎日を送ることなど、想像も出来ないことかもしれませんが、

私たちの衣食住は、もっと、過酷な日々を送る人々によって、支えられているのかもしれません。

そうした想像は、タブーとされ、汚らわしいと、恐れられていることかもしれませんが、

私たち人間が、この地球で生き続けてゆくためには、避けては通ることの出来ない

この現実を、大いなる謙虚さをもって偏見無く、受け止める真摯な心、

そのための勇気こそが、生きる力になると信じています。



私自身は、ハブに咬まれることを、本当に恐れています。

鼻の横にあるピット器官(温度センサー)で、生き物の温度を感じることが出来るため、

暗がりの中でも、餌を見分けて、咬み付く事が出来ます。

以前、館長から教えてもらった一番の教訓は、

「たとえ、長い棒を持っているからといって、油断してはいけないよ、

ハブにとっては、その長い棒は無いも同然で、

それよりも、その棒を持っている手の温度を感知して、

射程距離に入ると必ず攻撃するからね。」という、一言です。

こうした特性を知っているか、知らないかでは、いざというときの対応は、

きっと違ってくるでしょう。

ハブに咬まれると(多くは叩かれる、打たれると表現され)、その痛みは激しく

大人でも痛くて、しばらく寝ることもさえできず、最初の処置が適切でなければ

指などの欠損など、後遺症を残すこともあるのです。

だから、本当に気をつけてもらいたいのです。



そして、ハブの事を想うとき、いつでも心から離れ無いのは、

5回もハブに咬まれていながら 『山のハブは殺さないでください。』と切実に願う

伝説のハブ捕り人、香村さんのことです。

その言葉には、生命に対する崇拝と、弱い立場へのやさしい思いやりにあふれていて、

こうした人に出会えた感動が、今の私を、強く育んでくれているのです。

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