2008年03月16日

気づきへの芽生え

3月の雨の合間の晴れた日は、野外の生きもの達も活発になり

小さな南の島を散策するには、打って付けの季節になりました。

この島の自然に興味をもって、積極的にホタル館を訪れる方々は、年々増えてきましたが

ホタル館というイメージから、光るホタルの成虫だけを、気軽に見学したいと訪れる方の中には、

生きものや自然への関心は、それほど強くない方も居られます。

それでも、ホタル館の多面的なアプローチから、

自然への興味を導き出すことへの切欠が、始まることもあるようです。

この日、ホタル館を訪れてくれた若い恋人達も、

どちらかといえば、生きものには関心のない二人でした。


   カンヒザクラ花とリュウキュウメジロ

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「すいませーん、ホタルは、見れないんですか?」

「はい、ホタル館では、ホタルに繋がる身近な生きもの達を見ていただきながら、

ホタルのことやその環境についての案内をしています。」

卵や若齢、蛹になる準備中や蛹時期、種類ごとの短い成虫の出現期以外の時期では、

生きたホタルを見られないことも多いのです。

そう話すと、残念なことに、たちまちホタル館への興味を失ってしまいました。


  クメジマボタル幼虫、カワニナを捕食

生きものが苦手な方に、無理強いしてまで、生きものの説明をすることはできませんが、

わずかな時間でも、ホタル館に入館していただけたなら、

少しでも、前向きに自然を理解してもらうことを、あきらめるわけにはいきません。

冷ややかな態度は百も承知で、館内の生きもの達を紹介したのですが、

「うわぁ、ハゴォ~!(汚い)」 「いやぁ~、きもちわるう~!」と、予想通り、

彼らにとっては、テラリウムの中で動く、小さな生きもの達を

素直な気持ちで、見ることは、ちょっと、難しい様でした。

生きもの達の説明をする私の目を避けるように、

チラチラと、腕時計に目をやって、時間を気にしているそぶりも見せています。

それでも、しばらくして、奥に展示しているハブに目を止めた二人は、



「すっげぇ~、俺、生ハブ見るの、初めて!」 「うっそぉ~、動いてるぅ~!」と、

今度は、初めて間近に見るハブの迫力に、興味を持って、

ガラスケースの中を食い入るように覗き込んでいます。

ハブは、この島の陸生爬虫類の中で、最大最強の生きものです。

鼻の横にあるピット器官と呼ばれる赤外線センサー(感知器)で熱を感じて

形や大きさ、距離などを判断し、毒を打ち込むことで、獲物を捕獲することを説明すると、


左右の穴がピット器官(アーラ岳で今年1月に轢かれていたハブ)

「このハブ、何、食べさせてるんですか?」そう質問してくれました。

「生きたネズミです。」と、私が答えると、

その答えを聞いた女性の目は、その行為を咎めるように、鋭く瞬きました。

「ひぇ~、残酷ぅ~!」男性のほうは、茶化すように、口元を歪めます。

生きもの達の食物連鎖を、机上で説明することは、とても簡単なことです。

でも、脈打つ鼓動や生暖かく感じる呼吸、

そして何よりも語りかけるような瞳を、こうして見つめながら、

生と死の事実を伝える葛藤は、多くの人にとって、

できれば避けてしまいたい事だと思います。

けれども、その避けようもない事実を、しっかりと受け止めることで

私達は、この地球環境で生きていく

人類としてのもっとも大きな責任を、自覚することができるのです。



「私達も、牛や豚や鶏を、食べるじゃないですか?」静かな声で、私がそう問いかけると、

その、当たり前だと思っていた日常の気にしてもいなかった事実に

二人は、ハッとしていました。

今まで、意識しなかった

自分達、人間という生きものが、目の前の半ば偏見を持って感じていた

小さな生きもの達と同じように、命を糧にしているという真実に、

深く気づくことができたようでした。

その一瞬の煌きは、ほんの少しではありますが、私に対する態度にも現れました。

傾き加減だった、目線は、少しだけ、まっすぐになり

そのほかの生きもの達についても、今度は、できるだけ理解しようと

一生懸命、耳を傾けてくれるようになりました。

もう、時間を気にするような仕草や、茶化すような言葉は、ありません。


  リュウキュウオオハナムグリ:一部は成虫で冬を越します

一通り、館内の説明を終えた私に、彼らは少し、照れくさそうに、

「ありがとうございます。」という言葉を残してくれました。


ホタル館の目的は、ホタルだけにあるのではなく

ホタルの生息する久米島の環境を、保全する為の様々な考えや関わりの中から、

ホタルと繋がる私達人間が、この地球環境で、生きてゆくために切り離すことのできない

自然への理解を深めたいという願いを、強く持っています。

『ホタルが増えた。』という現象は、その願いの延長線上にこそあるのだと

私は、心から信じています。


ホタル館を後にする二人を、笑顔で見送る私にとって、

一人一人が、持っている、『気づきへの芽生え』に、こうして時折、

触れることができたときの喜びは、本当に心地よく、

ホタル館で飼養している生きもの達の魅力の素晴らしさと、

人間の聡明さに、改めて感謝が溢れてきます。

そうして、こうした毎日が、私自身への気づきの芽生えでもあり、

又、“明日も、がんばろう!”という新鮮な気持ちにもさせてくれるのです。


   オニタビラコ花

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この記事へのコメント
今朝、上の子が天気予報を見ていて、「沖縄ってもう夏?」
と言っていました。
「海開きって4月だっけ?」というと、「そうだよ。」と。
学校で沖縄のことを調べる担当になって調べたらしいのです。
少しずつですけれど、なんでも身近な問題としてとらえて、
生きていけるといいと思います。
Posted by モニママ at 2008年03月17日 10:13
モニママさん、コメントをありがとうございます。

子ども達が、学校での教科の中で、何かを調べる切欠って、
とても大切だと思います。

調べた何かを、書き取る子ども達の思いや考えは、
ノートの文字には、現れないかもしれませんが、
白いページを一文字ごとに埋めてゆく度に、子ども達の心は、
自分という人間を、構成してゆく過程をくぐっているのだと思います。

その感動を、寄り添い見守ることができる
母という時間は、幸せな、ありがたい時間ですね

PS,モニママさんの素敵なHPに、うっとりしてしまいました。
  すてきな作品を知ることができて、感謝しています。
Posted by satou-nsatou-n at 2008年03月18日 09:35
先日は、
『ホタルの国』の本贈呈ありがとうございました。

とても、素敵なプレゼントに感激致しました。

早速、待合室に置いてます。

老若問わず手に取られ読まれてますよ。

本やブログは、生きること共存する事を考え意識を高めさせられます。

近くで観ることのない爬虫類、
美しい自然、草花の写真で、今ここに居ることの素晴らしさを再確認しています。

そして、保護・保全活動されてる さとう様ご夫妻、メンバーの皆様に感謝いたします。
Posted by 仲里中央診療所 上原 at 2008年03月18日 09:58
仲里中央診療所 上原さん、コメントをありがとうございます。

こちらこそ、診療所に来られる方々に手にしていただけて、
ありがたく思います。

私たちの生まれ育った沖縄は、美しい島です。
この美しい島を、私も夫も、本当に深く愛しています。

久米島に移り住み、この島の素晴らしさに、心からの感謝を込めて
これからも、皆さんと一緒に、自然を、大切にするための試行錯誤を
行ってゆきたいと思います。
上原さんも、ぜひ、ご一緒してくださいね♪
Posted by satou-n at 2008年03月18日 23:41
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