2008年02月10日

島の宝

小雨交じりの北風が、大きくうなりながら吹き荒れて

久米島の冬は、ピークに達しています。

開館のための準備中に鳴り出した電話から

「裏の畑で、ヤマガーミーを捕まえたけど、

よく解らないからちょっと見に来てくれんかねぇ。」という、問い合わせがありました。

開館時間まで、まだ余裕があったので、直ぐに出かけようと準備をしていると

自転車に乗った清水小学校の4年生が、元気よくやって来ます。



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「今から、ヤマガメを保護しに行くけど、一緒に行く?」と聞くと、

4人の子どもたちは、目を輝かして「ウン、行く、行く~!」と、大喜びです。

さっそく、子どもたちを車に乗せて、連絡のあったお宅へ出かけました。



「ヤマガーミーは、知ってるけどよぉ、このカメは、ちょっと、今まで見たのと違うみたいサァー。」

そう言って、おばあちゃんが見せてくれたのは、リュウキュウヤマガメのメス。

どうやら、おばあちゃんは、甲羅の高さの低い、オスのヤマガメしか見たことが無かったらしく

甲羅が高く盛り上がって見えるメスのヤマガメを、別の種類のカメだと思ったそうです。

説明を聞いたおばあちゃんは「アッハー、そうだったのねぇー。」と、水がしみこむ砂のように

軽々と新たな情報を受け取ってゆきます。



そして、話を聞くうちに、実は、このカメを見つけたのは、一週間も前のことで、

飼おうと思って、ミミズや金魚の餌、刺身まで与えてみたらしいのですが、

一向に食べる様子が無いので、困っていたらしいのです。

そのとき、ユイマール館で、久米島紬を織っている娘さんから

「このカメ、天然記念物だから、ホタル館に連絡したほうがいいはずよぉ。」

と、言われて連絡したということでした。

このお宅は、旧正月の松飾りでも気づいたのですが、

おじいちゃんは、ウミンチュ(海人=漁師)で、最盛期のイカ漁の仕掛けを

いろいろと、見せてくださいました。



家の庭にある車庫と兼用の物置には、船にたまった海水を汲み出す『ユートィ』という

年代物の道具や、アダンの繊維で編んだ馬の装具などが置かれていて、

私や子どもたちに、次々と惜しげもなく披露してくださいました。

おばあちゃんは、束ねたアダンの繊維を数本、無造作に手に取ると、

「昔は、こうして縄を編んで、小遣いを稼いだわけさぁー。」と言って

手を揉むようにスッ、スッと動かします。



すると、機械から出てきたように整った紐が、魔法のように出てきます。

あまりの見事さに、見よう見まねでやってみましたが、

私の手が、編んだ紐は、あまりにも歪で、一銭のお小遣いも稼げそうもありません。



4人の元気な子ども達は、おじいちゃんの軽トラックの荷台にカメを乗せて

代わる代わるにちょっかいをかけて遊んでいます。

「カメは、噛むから、気をつけなさいよぉー。」と、

おばあちゃんの子ども達への忠告は、端的で的確でいながらも、

そのニュアンスは、朗らかで暖かな愛情に満ちています。



おばあちゃんの手も、おじいちゃんの手も、よく日に焼けてしなやかに動き

畑や漁を生業にして生きてきた笑顔には自信に満ち溢れ

島んちゅ独特の魅力をかもし出しています。

昔は、人の暮らしと自然が、今よりももっと近い距離にあって

その厳しい自然環境に柔軟に対応することで、身に付けた聡明さを、

年を重ねながらも保ち続けることができたお年寄りには、

穏やかでありながらも、ゆるぎない魅力が具わるのだということが、

この日お会いできたおじいちゃんとおばあちゃんから、明確に伝わりました。

そしてその存在が、私や子どもたちの世代へ、

血の繋がりだけに依存しない、大きな感動を与えてくれるのです。



私には、生まれ育ちを問わずに共感できる、この大きな感動も、

沖縄やこの島にとっての、かけがえのない宝物の一つなのだと、確信しています。



その日の夕方、ホタル館に遊びに来た8人の子どもたちと一緒に、

保護したカメを、保全地区である森に帰しに行きました。



この子達の、この日の体験が、自然への気づきの一角になることを願いながら

放たれたカメたちの踏みしめる濡れた落ち葉の一葉一葉に、

今朝のおじいちゃんやおばあちゃんの笑顔を、思い起こしていました。

監視員という立場で、時には、島の慣習に苦言をしいらなければならないこともあります。

この島で、生まれ育っていない私への信頼が、

島の人々にとって簡単に受け入れられるものではないことも、障害なのかもしれません。

それでも、私たち人間の存在を、宝物へと育くむことができる、

素晴らしい地球環境である自然を、同じように大切に想う気持ちに、

気づいてもらう切欠さえあれば、この小さな南の島に共に暮らす喜びを見出し、

自然を共有しながら、素敵な島の宝として、生きてゆくことができるのだと、期待しています。

そして、それは、世界中の人が夢に見る、

エコロジカルワールドの真の姿、未来への希望だと信じているのです。



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この記事へのコメント
 ウミネコは無事、届けられましたー。
 いいな!!  その海人さんの家にはぜひ一度行ってみたいですね!
 こうしたおじいさんやおばあさんの持っている技術、
 それは冗談抜きで必要になってくるような気がします。
 それに、こうして伝えていくことで、交流が出来たら、
 楽しいですしね。子供たちに、何かが伝わっていくのを、
 願うばかりです。
 今日もホタル館は楽しそうでいいなぁ!
 お疲れ様です!
Posted by Shas at 2008年02月12日 00:24
Shasさん、コメントと、鳥の搬送の報告、ありがとうございます。

昨日は、最終便の飛行機が遅れて、動物病院へ到着したのは、21時を過ぎていたのではないでしょうか、本当にお疲れ様でした。
ミサゴから、数日もしないうちにウミネコの搬送を立て続けにお願いすることになってしまい、連絡を入れるのに躊躇してしまいましたが、釣り針を飲み込んだウミネコの治療は、こちらではどうしようもないため、再び、Shas さんにお願いしました。
遅い時間まで、病院で待っていてくれたスタッフの皆さんにも、いつも、いつも本当に感謝しています。

自然を守るための行動に、お礼を言われるのは、多分実際に関わっている人にすれば、私自身も含めて、当然のことをしている認識があるものですから、「やめてくださいよ~。」という困惑になってしまうかもしれませんが、それでも、私は、こうして実際の活動を継続しながら、協力してくれる人々への感謝の気持ちを、止めることができません。

久米島空港の航空貨物のスタッフの皆さんにも、いつも親切に丁寧に対応して頂いていて、ありがたいと想っています。

これからも、Shas さん、仲間の皆さん、どうかよろしくお願いしますね~!
Posted by satou-nsatou-n at 2008年02月12日 13:21
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