2008年01月11日

草原のカマキリ

「シャリ!シャリ!シャリ!」カマキリに鳴き声があったとしたら、

きっと、こんな鳴き声かもしれないね。

そう言いながら、子ども達は、ホタル館の芝生に出現したチョウセンカマキリの

大きな蟷螂の斧に、ちょっかいをかけて遊んでいます。

「血ぃーでるぞぉー!」と、笑いながら声をかけても

「いいさぁー。」と、いっこうに気にしません。

草原のカマキリ
    チョウセンカマキリの雌

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草原のカマキリ

以前、ホタル館を訪れた観光者が、テラリウムの中のチョウセンカマキリを指差しながら

「このカマキリは、外来種なんですか?」と、質問されたことがありました。

たしかに朝鮮は、外国ですが、このチョウセンカマキリの“チョウセン”とは、

和名を(英名から?)つける時に、代表的分布域の朝鮮をとって付けられただけ?で、

その分布は、本州以南の日本全域、この久米島や沖縄、与那国島まで含めた広い場所に

昔から居るので、日本のカマキリの代表的な種類といえます。

そのため、単に、カマキリと呼ぶことも多いのです。

草原のカマキリ

    チョウセンカマキリの雌

久米島には、他に、オキナワオオカマキリやハラビロカマキリ、

ウスバカマキリ、ヒナカマキリがいますが、

面白いことに、本土では、オオカマキリより華奢なチョウセンカマキリは、

久米島や沖縄はもちろん、南の島に行くほど大きくなり、日本最西端の

与那国島のものは、日本最大とされます。

ただ大きくなるだけでなく、胸の幅も広くなるため、

沖縄のカマキリをムナビロカマキリと呼ぶ人もいます。

反対に、オキナワオオカマキリはスリムで華奢な体つきになっています。

草原のカマキリ

草原のカマキリ

       オキナワオオカマキリの雌(上)、雄(下)

カマキリの身体の色は、いかにもみずみずしい薄緑色をしたものもいれば、

年をとったイメージの茶色をしたものもいます。

餌となる他の昆虫などに、見つからないように近づくカモフラージュのための擬態、

でも、その色は、鳥やトカゲから身を守る際の隠蔽色(保護色)としても役立ちます。

カマキリの主な生息場所である草地や林縁での彼らの暮らしぶりが、

背景となる風景の色の中でどれぐらい適合しているのか、

実際に垣間見る機会があれば楽しいのですが・・・。最近はすっかり影を潜めました。

草原のカマキリ

   チョウセンカマキリの雄

草地や林縁にすむカマキリと同じところで生活するトカゲの一種のアオカナヘビも、

最近、顕著に減少している種類です。ヘビと名前が付いているのは、

尻尾が全長の3分の2の長さを占めているため、ヘビのようだというので、

そう表現されました。また、全身茶色なので、錆びた鉄色という意味で

カナヘビという名前が付けられたのだと思います。

日本では、秋から冬にかけて、トカゲを捕食するたくさんの渡り鳥や冬鳥が飛来します。

草が枯れ、背景が茶色に変った風景の中では、茶色であることが必要だったのでしょうか。

沖縄では、このトカゲ、雌は全身緑色、

雄は緑に茶色の筋が入った緑色の強い風合いをしています。

草原のカマキリ

     アオカナヘビの雌(左)雄(右)

冬でも、植物が枯れない沖縄では、緑の風景の中で、緑色を主体とした姿でないと

生き残れなかったのでしょう。

緑を青と表現したことから、アオカナヘビという名前が付けられました。

ホタル館の草地には、農薬や除草剤の散布がないので、

バッタやカエルやトカゲなどが多く見られます。

その、一足ごとに忙しげに逃げ惑う様々な小さな昆虫達の後ろから、

スローモーションのような独特な動きで歩いている(本人は、逃げているつもりかも?)を、

子ども達は、目ざとくゲットして、遊び相手になってもらうのです。

カマキリの鎌の威力は、かなりすごくて、

以前、その鎌に挟まれて、血を出したことがありますし、

草原のカマキリ草原のカマキリ

    オキナワオオカキリ雄(左)           チョウセンカマキリ若い雌(右)

チョウセンカマキリが、同じくらいの大きさのニホンカジカガエルを、

その鎌に挟んで、ムシャムシャ食べているのを、目撃したこともありました。

最近、その強いカマキリやアオカナヘビなどの小型肉食の生きもの達が、

頻度の激しい除草剤や農薬の散布によって、年々、姿を消しています。

畑に除草剤を散布しているお年よりは、

「あっさぁー、大丈夫よ、除草剤は、草を枯らすだけだから。」

と、その謳われている効能を、魔法にかかったように信じて疑いません。

「バッタも、コオロギも、死なんから大丈夫。」と、笑いながら言うのです。

「でも、バッタやコオロギは、その草を食べなくてはいけないから、結局死んでしまうね。」

と言うと、「他に行けば草はあるから、心配ないさぁー。」と、あっさりかわされてしまいます。

また、最近増えてきた牧草は、子牛の飼料ですから、

当然、農薬や除草剤を撒布することはないのですが、

虫の付かない品種を選んでまかれているためなのか?きれいな牧草地ほど、

バッタやそれらとつながりのある生きもの達の姿は、不気味なほど見当たりません。

多くの人々は、経済性や利便性を優先させるあまりに、

私たち自身が、この地球環境と、つながりのある生命体であるということを

深く考えることなく生活しているのかもしれませんが、

草が枯れて、小さな生きもの達が死んでしまうような除草剤や農薬は、

どんな理由を並べられても、同じ生きものである人間にとって、

害になることは間違いないことです。

草原のカマキリ

        オキナワオオカマキリ雌

雨が降れば、土壌に浸透するだけでなく、川や池、湿地、時には海まで流れ出します。

『実際の被害に遭うまでは、そのための対策を行うことが出来ないから仕方ない』と、

よく言いますが、環境問題の深刻さは、個人のレベルを超えて、

全地球規模であることを、利害を超えて、真剣に深く取り組むことを、考えてほしいのです。

そう願うとき、子ども達の手や服の上を走り回っているオオカマキリのお得意のポーズさえ、

私には、声なき声の生きもの達からの切実な想いを込めた祈り(マンティス)に映ります。

真冬の一月だというのに、まだ生き残っていた大きなカマキリと、無邪気に遊んでいる

子ども達の傍らで、私は、とても複雑な思いになります。

それでも、一歩、また、一歩、愛しい者達と共に、前に向かって、進んでいきましょう。

私たちは皆、誰でも、子ども達の素直な笑顔に、微笑み返す勇気を、持っているのですから。

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この記事へのコメント
はじめまして。
お人柄がしのばれるすてきなブログですね。
時々寄らせていただきます。

かまきり、大好きです。
昔々、たくさんのかまきりと出会えた頃も、そのたびにハッとしていました。
「むっ、殺気!」
昨年の夏、首里の街中で見かけて以来、ご無沙汰です。
Posted by gadogadojpgadogadojp at 2008年01月12日 00:02
こんばんわ。
先日は、ご丁寧な ご挨拶を ありがとうございました。
新春も こちらに お邪魔させて頂きます。

カマキリ!
私の幼少時においては
カブト虫以上に ヒーローだったのかもしれません。
鎌の強さの感触、
今でも何となく残っています。

小さな生き物に目を向けた場合の生息の環境、
私たちには、
なかなか感じ取れない部分かもしれませんが、
深刻なのでしょうね。

「ん・・・」って
頷くばかりで何も出来ていませんが。
Posted by みやび at 2008年01月12日 00:23
gadogadoさん、コメントをありがとうございます。

カマキリのファンは、結構多いようで、嬉しくなりました。
おまけに、ブログをお褒めいただき、これまた、二重の喜びです!
ぜひ、また、お寄りください。
私も、gadogadoさんのブログに、懐かしい“中島みゆき”を伺いに行きます!


みやびさん、コメントをありがとうございます。

小さな生きもの達への感情は、接する機会がなければ、芽生えることは難しいかもしれません。
でも、それは、私たち、人間社会での弱者に対する感情に共通しています。
お年寄や、病や貧しさに苦しむ弱者へのまなざしが、本当にやさしい社会は、
小さな生命に対しても、同じ様に、心を砕くことが出来ると信じています。
今年も、どうぞ宜しくお願いしますね!
Posted by satou-n at 2008年01月14日 13:58
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